産業革命は向こうからやって来たので、日本企業の多くは事業で得た資金のうち、数%をR&Dに割く
という風に考え勝ちである。 エジソンが白熱電球を発明した時には、事業化のためには、電気を作る、
すなわち発電所まで発明する必要があった。水力発電所をつくるには速硬性のセメントを発明する
必要があった。 ダム建設のためには資材の搬入のための道路が必要になった。 つまりエジソンは
白熱灯の発明と共に、水力発電所、速硬性のセメント、舗装道路の発明を成し遂げたのである。
こうして全く新しい産業基盤が生まれたのである。 事業は発明を通して、R&Dを始まりとして誕生した
のである。 エジソンの言葉とされる「必要は発明の母」は決して「誰もが必要性を感じている」ものを
実現する」ことではなく、「自分しか必要性を感じない」ものを考え実現することを指しているのであろう。
企業にとっては、今の事業は永遠のものではなく、いつか終わりの来るものであるから、単に現在生産
している製品を改良するだけでなく、新しい商品群を創造する必要があるのである。 こうして生まれた
技術を商品として生産することで、複製を行い、あるいはライセンスによって他社にも複製をしてもらい、
さらなるR&D費用を生み出し、創造につなげていくということが大事なのである。
(この図は日経エレクトロニクス1999年に掲載されました。)
産業を植物になぞらえると、鉄鋼産業は「桃栗3年柿年」のように実がなるまでに年数がかかるものの、
実がなり始めたら、40年も実がなる性格を持っていますので、「果樹園経営」ということができます。
鉄鋼産業は1970年の始めに1億トンに達し、今なおその規模を保っています。
ビデオ産業の場合約20年で「往って来い」になっていますから、常に花を咲かせておくためには、
今咲いている花が散る時には新たな花を咲かせるように、庭を設計する必要があるので、
「ガーデニング経営」ということができるでしょう。成長期間はわずか7-8年です。
ネットビジネスでは、「なんだそうやればいいのか」と分かる時には、もうビジネスの勝負は
決まっているという点では、「地上に見えた筍はえぐくて食べられない」という「筍園経営」に模すことが
できるでしょう。
このように企業は永遠たらんと思っても、事業は永遠ではありません。MOTの本質的な命題は
このジレンマを解決しようとすることであります。100年のインフラが消滅した写真フィルム業界や
カメラ業界、回線交換型インフラの消滅を経験した電話キャリア業界、ガソリン車に別れを告げる
自動車業界、ブラウン管テレビが消えた家電業界、つぎつぎ主流が入れ替わるコンピュータ業界など
このような事業の入れ替えをしないで済む企業はないでしょう。「夕日はだれにも止められない」のです。